「夫は真面目で強いから、大丈夫だろう」
そんなふうに私は思っていました。
教員という仕事は忙しい。
それを理由に夫の不調を見て見ぬふりしていたのは、私の方でした。
今回は、夫が「うつ病」と診断され、休職に至るまでの経緯と、その後の現実について綴っていきたいと思います。
これを読んでくれる誰かの気づきや、助けになればと願っています。
新年度の異動。真面目な夫が追い込まれた日々
夫は教員です。
これまでにもいくつかの異動を経験してきましたが、新年度の今回は様子が違いました。
異動先は生徒数の多いマンモス校で、前任の先生の引き継ぎがほとんどされていなかったのです。
赴任早々、前年度の未処理業務や保護者対応、引き継ぎ業務、教科指導、……と、とにかくタスクが山積み。毎日夜遅くまで働き、帰宅は22時、23時を過ぎることもしばしばありました。
それでも夫は「新しい環境で頑張らないと」と言って、弱音を吐きませんでした。
土日も休みなく家では常にパソコンを開いて仕事。そんな日々が続き、家族で過ごす時間はほとんどありませんでした。
最初のサインは「不眠」と「動悸」だった
最初に異変を感じたのは、4月ごろのことでした。
「なんか、眠れないんだよね」
「朝、心臓がバクバクする感じがして…なんか変なんだよ」
そんな言葉を、夫がぽつりぽつりと口にするようになりました。
でも、その時の私は「疲れてるだけじゃない?」と軽く流してしまったのです。
それが“重大なサイン”だったにも関わらず。
表情もどこか曇り、笑わなくなった夫。
それでも学校には行き続けていました。「迷惑をかけられないから」と。
「もう学校にいられない」夫からの突然の電話
ある平日の午後、私のスマホに夫から電話がありました。
「ごめん…もう学校にいられない…無理かもしれない」
最初は何を言っているのかわからず、ただ「どうしたの?」と繰り返すばかり。
とにかく一度家に帰らせて、すぐに心療内科を受診させました。
医師の診断は、はっきりとこう告げました。
「うつ病です。今すぐに休んでください」
その言葉を聞いたとき、私は頭が真っ白になりました。
うつ病――。
テレビやネットで見聞きしたことはありましたが、それがまさか夫に、そして自分の家庭に起きるとは思ってもいませんでした。
「すぐに良くなる」と思っていた私の大きな間違い
「ちょっと休めば、きっと元気になる」
私はどこかでそう軽く考えていたのかもしれません。
しかし、現実は違いました。
うつ病は、風邪のように一週間で治るようなものではなかったのです。
休職後、夫はさらに落ち込んでいきました。
・何もする気が起きない
・「生きてる意味が分からない」と呟く
・日中も布団から出られない
私はどう接すればいいか分からず、焦りや苛立ちを感じてしまうこともありました。
「早く元気になってほしい」「仕事に戻ってほしい」
そんな思いを無意識にぶつけてしまい、夫をさらに追い詰めたこともありました。
家族としてできたこと/できなかったこと
私がやったことの中で「正解」だったと思えるのは、次の3つくらいです。
- 一緒に通院に付き添ったこと
- 無理に励まそうとしなかったこと
- 「仕事に戻らなくていい」と伝えたこと
逆に、できなかったこと、してはいけなかったこともあります。
・「早く治そう」「元気出して」と励ます
・「前はできてたじゃん」と比較する
・つい自分の不安をぶつけてしまう
うつ病の回復には「時間」と「環境の安定」が必要だと、医師や支援者の方から聞きました。
家族も、支える中で傷つき、疲れていきます。
でも、少しずつ、夫の目に光が戻ってきた日。
たったそれだけで、私は救われたような気持ちになりました。
教員という仕事と、うつ病のリスク
教員という職業は、人と人との間で心を削られる仕事です。
子ども、保護者、同僚、上司――
どれも「相手を思う」気持ちがなければ続けられない仕事です。
でもその「思いやり」が、時に自分を犠牲にしてしまう原因になることもあります。
責任感が強い人ほど、ギリギリまで頑張ってしまう。
そして、限界を越えてから、ようやく「壊れてしまった」と気づく。
私の夫もそうでした。
周りの人がどれだけ心配しても、本人が「頑張らなきゃ」と思っている限り、休めないのです。
今、伝えたいこと
この体験を通して私が一番伝えたいのは――
「まさかうちが」は、誰にでも起こりうるということ。
そして、**うつ病は“心の弱さ”ではなく、“心の病気”**だということ。
教員という立場に限らず、真面目な人、責任感の強い人ほど、知らぬ間に心が擦り切れていきます。
家族やパートナーが最初に気づき、寄り添ってあげることが、本当に大切です。
最後に:誰かの「気づき」につながりますように
夫は今も休職中ですが、少しずつ笑顔を取り戻しつつあります。
まだ復職の目処は立っていませんが、それでも「生きていてくれてよかった」と心から思います。
この投稿が、同じような状況で悩んでいる方、教員のご家族、そして心が疲れている誰かの“気づき”になれば幸いです。
あなたの大切な人も、どうか無理をされていませんように。
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