【体験談】教員の夫がうつで2回目の休職、そして退職を決めるまで

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「もう、教員やめてもいいんじゃない?」

そう夫に言葉をかけたのは、2度目の休職に入ってからでした。私たち夫婦にとって、この一言を言うまでには、本当にたくさんの葛藤と不安、そして苦しみがありました。

最初に夫が体調を崩したのは、今から約2年前のことです。教員として働いて十数年、真面目で責任感の強い夫は、常に生徒や保護者、同僚のために全力を尽くす熱血教師でした。メンタルも強い夫にはうつという病気とは無縁だろうなと私は勝手に思っていました。

なので1度目の休職に入った時には、まさか夫が、、、という気持ちでした。「少し休めば、きっとよくなる」「少し疲れがたまっていただけだろう」しかし実際は、医師の診断により1年近くの休職を取ることになりました。

1年後、夫は復職しました。最初の1ヶ月は気持ちが不安定な日はあったものの、毎朝学校へ向かう姿を見て、私は内心とてもほっとしていました。「このまま、少しずつでも仕事に戻れたらいいな」そう思っていました。

しかし、現実は甘くありませんでした。

徐々に、また夫の表情に曇りが戻ってきました。朝起きるのがつらそうになり、仕事に行く時間が近づくにつれ動機がはげしくなり、職場の駐車場まで行っても車から降りられない日が何度もありました。「でもなんとか頑張らなきゃ」と自分を奮い立たせている様子は伝わってきましたが、体は正直でした。

「動悸が止まらない」「息が苦しい」「涙が止まらない」「夜眠れない」

その後は出勤もままならなくなり、欠勤が増えました。ついには職員室に入ることも、職員会議に出席することさえもできなくなり、夫自身も限界を感じて、2度目の休職に入りました。

2度目の休職期間中は、休養と治療に専念しました。気持ちが安定している時には、散歩したり、ドライブしてリフレッシュするよう心掛けました。薬の服用と併せて、リワーク(復職支援)を受けたりもしました。リワークでは、運動や瞑想、マインドフルネスなど、自分と向き合うことができたと思います。

それでもやっぱり夫は、毎日が同じではありませんでした。
気持ちが不安定でイライラが止まらなかったり、突然不安に押しつぶされそうになったりする日もありました。一方で、まるで嵐が通り過ぎた後のように、静かで穏やかな時間を過ごせる日もありました。

無理に何かをしようとせず、ただ一緒にご飯を食べて、テレビを見て、家族で笑い合える――そんな何気ない日常が、とてもありがたく感じられたのです。

私たち家族は、そんな穏やかな日々が少しでも、少しずつでも長く続いてほしいと、心から願っていました。そしてそのために、何を守るべきなのか、どう生きていくべきなのかを、ゆっくりと話し合いながら、日々を過ごしていました。

ただ、やはり**「復職」のことは、常に夫の心のどこかに引っかかっていた**ようです。

「今は休んでいるけれど、いずれ戻らなくてはいけない」「周囲に迷惑をかけてしまっている」――そんな思いが、頭のどこかから離れないまま、静かに夫を追い詰めていました。

そして、復職予定日が近づくにつれて、その不安は日に日に大きくなっていきました

「本当にまたあの業務をこなせるのだろうか」
「自分がいなくても学校は回っていた。戻る意味があるのか」
「また調子を崩して、迷惑をかけるだけではないか」

夫はあるときから、

「復職のことを考えると苦しい、もう戻れる気がしない。」

と本音をもらすようになりました。

私はその言葉を聞いたとき、また教員に戻ったとしても、心が壊れてしまうと感じました。

「もう、教員やめていいんじゃない?十分がんばったよ。教員だけがすべてじゃない。」

私は、そう言いました。

本当に大切なのは「命と心」だと思いました。

教員という仕事に誇りを持ち、子どもたちに愛情を注いできた夫の姿を、私は誰よりも知っています。それでも、その仕事が命を削ってしまうのであれば、続けるべきではないと、心から思いました。

実は、夫が「やめてもいいかもしれない」と思えるようになった背景には、障害年金の受給が決まったことも大きく影響しています。

それまでは、私たち夫婦の中に「経済的な理由で、どうしてもまた教員に戻らなければならない」という強いプレッシャーがありました。「家族のためには辞められない」という思いが、夫自身をさらに追い込んでいたのだと思います。

けれど、障害年金の申請が通り、一定の収入が得られるようになったことで、私たちの中に少しだけ安心感が生まれました。もちろん、それだけで贅沢に暮らせるわけではありません。でも、「もう無理して戻らなくてもいいんだ」と、経済的な縛りがほんの少し解けたような感覚がありました。

そして今は、私たち夫婦でできることを少しずつ模索しています。

教員をやめたからといってうつが治るとも限りません。

でも環境を変えることによって少しでも心の負担が減らせるなら、やめることは「失敗」ではなく「前向きな決断」だと私は思っています。

同じように悩んでいる方がいたら、どうか自分を責めないでほしいと思います。

あなたがあなたらしく生きる道は、きっと他にもあります。

※障害年金の申請については、私たちも最初はまったくわかりませんでした。無料で相談できる社会保険労務士のサービスや、障害年金の申請サポートサイトもあるので、心当たりのある方は一度調べてみることをおすすめします。

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