はじめに
「うつ」と聞くと、どんなイメージがありますか?
気分が沈んで涙もろくなる、自分を責めてふさぎ込む…。
私も最初はそう思っていました。実際、夫が休職を決めたときも、そういう姿を覚悟していたんです。
ところが、数週間たっても、夫の様子は私が想像していた“うつ”とはまるで違っていました。
むしろ、イライラしやすくなり、ささいなことで怒りを爆発させることも。
そしてその怒りの矛先が、私や子どもに向けられることが増えていったのです。
ささいなことで怒るように
それは本当にちょっとしたことでした。
・子どもが学校に忘れ物をしてしまったとき
・夫から頼まれていたものと違うものを買ってきてしまったとき
・急な予定変更がおきたとき 等々、、、
以前の夫なら、少し嫌そうな顔をするくらいで済んでいたようなこと。
でも、今の夫はそのたびに声を荒げ、怒りをぶつけてくるのです。
そしてその怒りはなかなか収まらず、どうしてそんなささいなことで?と理解ができず、夫に対してつい言い返してしまい、大喧嘩に発展することもありました。
「うつなのに、なんでこんなに怒るの?」
「なんで、いちばんそばにいる私たちを責めるの?」
「非定型うつ」という言葉に出会って
不安になった私は、インターネットで「うつ 怒る」「うつ イライラ」などと検索するようになりました。
するとある日、「非定型うつ病」という言葉に出会いました。
非定型うつ病とは?
非定型うつ病は、いわゆる典型的なうつ病(メランコリー型)とは少し違う特徴を持っています。
以下のような症状がよく見られるそうです。
✔ 一時的に気分が良くなる(気分反応性)
誰かと話したり、楽しいことがあると一瞬元気になったように見える。
✔ 強い疲労感や身体の重さ(鉛様麻痺感)
朝起き上がれないほど身体が重い。
✔ 他人に対する怒りや過敏な反応
ささいなことで怒ったり、責めるような言動をする。
✔ 過食や過眠
寝すぎる、食べすぎる傾向がある。
夫の状態と、まるでぴったり重なるような症状に、私は思わず息をのみました。
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夫は「否定型うつ」だった
一般的なうつ病では「自分を責める」「自己否定が強くなる」とよく言われます。
でも、夫の場合はそうではなく、むしろ「他人を責める」ような傾向が強く出ていました。
・職場への怒り
・家族への苛立ち
・「自分は悪くない」というような言葉
正直に言えば、受け止めきれない気持ちになることもありました。
でもそれも、病気の一部なのかもしれない――
そう思うと、少しだけ気持ちがラクになりました。
それでもやはり、夫のからだを心配しつつも、ささいなことで責められると辛いですし、やり場のない気持ちになります。
家族としてできることは?
支える側が大変なのはもちろんですが、何より本人が「自分自身との闘い」に苦しんでいます。
うつ病の症状のひとつに「感情のコントロールができなくなる」というものがあります。何でもないことで落ち込んだり、涙が止まらなかったり、逆に怒りっぽくなってしまったり──。自分の感情をどうすることもできないもどかしさに、本人は深く悩み、罪悪感や無力感を抱えていることが少なくありません。
「どうしてこんな風になってしまったんだろう」「こんな自分で周囲に迷惑をかけているのではないか」──そんな思いがぐるぐると頭の中を回り、本人をさらに苦しめます。これは決して「甘え」や「気の持ちよう」ではなく、脳の働きや神経伝達のバランスが崩れていることで起きる、れっきとした病の症状です。
一方、支える側も、目に見えない苦しみを理解しようと努めながら、時には戸惑い、時には無力さに打ちひしがれることもあります。寄り添うことが難しいと感じる瞬間もあるでしょう。私もそうでした。
それでも、そばにいてくれる存在は、本人にとってかけがえのない「希望」であることは間違いありません。
うつ病と向き合うには時間がかかります。そして、支える人も、支えられる人も、無理をせず、自分自身を守りながら少しずつ歩んでいくことが大切です。完璧に支えようとしなくてもいい。小さな「大丈夫?」の一言が、相手の心をそっと温めることもあります。
私は以下のようなことを心がけています。
- 無理に励まさない
- すべて受け入れる
- 自分もカウンセリングや相談窓口を活用する
- 一人で抱え込まず、信頼できる人に話す
非定型うつは治る病気です
非定型うつ病は、適切な治療(薬や認知行動療法)で回復が期待できる病気です。
ただし、「怠けてるだけ」と誤解されやすく、支援が遅れてしまうこともあります。
怒りや攻撃的な態度ばかりが目立つと、家族としてもつらくなりますが、
それも含めて病気の一つの表れだと知っておくと、少しだけ向き合いやすくなる気がします。
おわりに
「うつなのに、怒る」――最初はそのギャップに戸惑い、深く傷つきました。
でも、病気にはいろいろなタイプがあり、本人にとっても、家族にとっても予想外の症状が出ることもあるのだと学びました。
今も夫は治療中ですし、私自身も時々しんどくなります。
でも「正しく知ること」は、何よりの支えになります。
もし、あなたの大切な人にも似たような変化が見られるなら、
「非定型うつ」という可能性も、ぜひ一度、調べてみてください。
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